〈奇妙な果実〉を観る


清水啓司さん演出・構成(出演も)によるダンス公演、〈奇妙な果実〉
フェスティバルゲートのArt theater dB にて観る。
http://www4.osk.3web.ne.jp/%7Eashen/kimyou/

男二人と女一人のダンサーでの即興の舞台。

音はノイズ系かあるいは無音の時間が長かったんだけど、全体的になんというか映画の演出を生で見ているようでした。

清水啓司さんというダンサーさんは、まだあまり観るチャンスがないんだけど凄く好きなダンサーさんで、なんというか動きが普通と違う。無駄な動きがなくて、速く動いてもゆっくり動いても体の先までコントロールされている感じで、しなやかで勢いによる動きがあんまりないように見えるのに、ふとした衝動的な動きに見ているこっちの体まで一緒に動いてしまうようなパワーがあるというか。どちらかというとくねくねと奇妙にねじ曲がる動きが多くて、どこ見ているのか判らない時が多いので怖い時もあったりします。

今回の舞台は黒い壁をバックに白熱灯っぽい色の照明がいくつか床にスポットであたっているところから始まって、まずは女の人が一人で不思議な動きで動いているところに、しばらくしてから男二人が入場するんだけど、二人が同じ動きでこっちに向いて黒いパンツをつまんでちょっとかわいくおじぎをして、後ろに向いてもう一度かわいくおじぎし、そのあとスローモーションで再度同じ動きをした瞬間に時間の流れがばっと変わった気がしました。

そのまま引っ張り込まれてしまった。

とりあえず前半はむちゃくちゃ怖かった。生理的に、ここはやばいという感じがしてお尻がむずむずして、何故か「うわ無理、ちょっと無理」とか思いながら見ていました。

あえて言うなら、前半の方はなんだかエクソシストの怖いシーンを無音で連続で見ているような印象だからだったのかな?

みんな最初はシンクロしているのにそのうち3人に流れる時間が変わって、早送りとスローモーションを一度に見ている感じでした。

しかもそのうちに、一人は人間のままだったんだけど一人は無意識から這い上がってきたなんだか判らないものみたいに見えてきて、もう一人はもっと透明な幽霊かなんかみたいな不思議な存在ということなんだろうか、と納得したとたんに、人間だった人がいきなり崩壊して別の物になっちゃって、幽霊は人間になって去って行き、イドみたいなやつは見守る存在になったり、するのです。

みんなどんどん変わって行って、それぞれが同じ場所にいながら異次元にいるみたいで、それが突然出合ったり、ちょっと前の場面がきっちり再現されて今の一人の踊りは実はまばたきの間に起った事だったのかなと錯覚させるようだったり、いろんなことが起っていました。

ダンサーさんの存在感も凄かった。清水さんなんかほんの目の前まできてゆっくりと動くところなんかもあったんだけど、なんだかぐぐーっと押されるような感じがして毛穴がぶわっと開いた気がしました。

なんだか、ほんとに怖かった。

あれは一体なんだったんでしょう。ダンスの舞台であんなにはっきりと別の世界を垣間みるのは初めてでした。なんだかちっとも言葉では説明出来ないのが悔しい。

しかも、終わって初めて即興と知ってびっくり。あの動きのどこからが即興だったんだろう。二回公演した二回目を観に行ったんだけど、こんなことなら一回めから観ておけば良かった〜!すごい後悔!!!

清水さんは27日にも京都でソロをやるらしいですが、http://www4.ocn.ne.jp/~nfgarden/
その日は太陽の塔を見に行くので多分行けないー。うう。また近々どこかで踊っていただけるのを切に願うのでした。